六年

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 轟音が辺り一面に響き渡る。  何が起こったのか全くわからなかった。  瞼を閉じる一瞬の内に事は終わっていたのである。  爬虫類が立っていた場所には、焼けた煤しか残っておらず周りの地面が抉り取られたように無くなっている。  身構えていた爺さんの方に振り向くと、掌から火が噴出しているではないか。  その様相は火炎などではなく業火と呼んだほうが適しているかもしれない。  驚愕と恐怖がこの身を包む。  アレはどう見ても魔法、魔術としか言い表せない神秘的で超常的な力または行為だ。  あんな力を人間が有してもいいものなのかとも思う。  だが同時に、興奮と期待を覚えた。  あの力を自分にも身に付けることができるのではないか、そう思ったからである。  善は急げとも言うので早々に行動を起こさなければならない。
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