夢のまた夢

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 日本ではないのならば、此処は国外のどこか辺境の町なのではないのかと思ったが、そうではない様だった。  その根拠は、私の知る中での言語ではないからである。 『私』の父は海外が好きで私の小さい頃からよく旅行に連れて行ってくれた。観光地として有名な場所だけではなく、誰も聞いたことのないような地名の場所にまで連れて行かれた。そのおかげか何度か言ったことのある国の日常会話程度なら話すことができる。  自立するまでにありとあらゆる国々を回り、色々な人種、言語の人と接してきた。だが、今の体の親が話している言葉は、一度も聞いたことがない。  そもそも、もし此処が発展途上国の辺境の村だとしても、暮らしぶりがここまで酷いはずはない。密林の奥地で暮らす民族ではあるまいし、槍や斧片手に簡素な布で体を包んでいるだけなんていうことはないと思いたかったが現状はそんな感じなのである。  私はこれが現実だとは思いたくなかった。確かに衝撃がくる少し前に子供になりたいとは言ったが、こんな所でしかも赤子になるという悲惨な目に遭っている。  現実だと認めることにしても、まだこの国、この世界の今の現状を一刻も早く把握することが先決である。
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