ふたり

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早織… 君はいつでも独りをきらっていたね。 19歳になって初めての大学生活を始めていた僕は、医療事務の学部を取っていた。 別に看護師になりたい訳でも、ましてや医者になりたいなんてこと思ったこともなかったが、 なんとなく人のために何かできる仕事をしたいなと考えていたからのこの学部だった。 そんな中途半端な気持ちで学部を選んだからか、或いはこの学部をなめすぎていたのか、授業の内容が全く頭に入ってこない。 もちろん周りはみんな看護師や医療関係の仕事に就きたいと思って選んだ訳だから、自ら調べるし行動している。 僕だけだ。こんなにやる気のない学生は。 半分諦めモードに突入しようとしていた時、僕と同じような状況の女の子が1人目に入った。 小柄な体型なためか、彼女の全てが幼く見えてくる。 彼女は僕の2つ前の右斜め下の席で、その場所が彼女の定位置らしい。 僕は授業中、彼女のことばかりを見ていた。 何故か気になった。 いつからか、まるで中学校に戻ったみたいな気持ちになっている。 偶然、友達のなかに彼女と仲が良いやつがいることを知り、うっすらと気づいた僕の気持ちに気を使って2人きりで話す機会を作ってくれた。 「石成さん…?」 「はい?」 「僕、詩田っていいます。…よろしく」 「よろしく」 ニコッと笑った彼女は僕の持っていた幼いイメージを覆すほどに綺麗な大人の顔立ちだった。
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