2人が本棚に入れています
本棚に追加
冬の気配に包まれた、ある街の大通り。
一匹の黒猫が、長い鍵尻尾をゆらしながらさっそうと歩いていました。
猫を見ると、人々は口々に言いました。
「まぁ、不吉ね」
「やだわ、あの真っ黒い体。気味が悪い」
「あっちへ行け、この黒猫!」
猫目がけて石を投げ付ける人さえ少なくありませんでした。
同じ猫、親猫でさえも、黒猫を敬遠しました。
でも黒猫は、淋しいとは思いません。
ひとりぼっちには慣れています。
生まれた時からそうだったのですから。
むしろ、独りでいるのを望んでいました。
誰かを思いやるなんて煩わしい。独りでいる方がずっと良い。
そう、思っていました。
最初のコメントを投稿しよう!