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春は気持ちいい。風も日差しも柔らかで桜が散っても眩しいくらい緑の葉が輝く。 だから眠くなる。だから寝ようかな…俺は読みかけの本を閉じて机に突っ伏した。 「睦月(むつき)!!まーた居眠りしてぇ…帰らないの?」 大きな声で俺の眠りを妨げたのは幼なじみの天草ひなた(あまくさ)。可笑しそうに笑いながら肩まである綺麗な髪を揺らした。 「あれ?ホームルームは?」 「睦月がぼーとしてる間に終わったよ?もしかして五月病?」 ぼーとする頭を教室に集中させると教室に残ってるのは俺とひなたしかいなかった。ひなたはそんな俺が可笑しかったのかクスクス笑った。 「中学から変わってないなぁ~…ここに入学したらいきなり派手な金髪に髪を染めてみんな不良だと思ってるよ?」 「え?俺不良じゃないよ?」 髪を金髪にしたからってなんで不良になるのさ?って思ったけど…俺の頭はイカレてるから同じ事かもしれない。 「あ、川田君と佐野さんだ」 ひなたが見つめてるのは外を歩いていく男子と女子。二階から見える二人は後ろ姿しか分からないけどひなたの友達なんだと思う。 「二人最近付き合い始めたんだって」 「へぇー」 ひなたはいつも笑っていて優しいイイコだから友達がいっぱいだ。入学したてでも知り合いがいっぱいいる彼女は凄いと思う。 「…それだけ?」 「それだけって?」 ひなたは困ったように笑ってた。でも本当に分からない。ひなたが何を言いたいのか分からなくって俺はひなたから視線を逸らした。 「むつ兄。ひなた帰るぞ」 ドアをガラッと開けたのは俺の弟。水無月(みなづき)。俺とはうって変わって黒髪に整えられた制服。けどピアスだってしてるし、ここだけの話し煙草だって吸ってる。 はっきり言って水無月のが不良だと思うけど器用な弟は成績もいいし、先生受けもいいから要領がいいんだと思う。 「家じゃ何もしないのにね」 「は?何言ってんだむつ兄…早く帰るぞ。二人してちんたらやってんなよ」
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