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すぐに追いかければいいのに俺は手帳をポケットにしまった。
何でか分からないけど追いかけて終わりにしたらダメだと思った。
何がダメなのか分からないけど。
※※※※※※※※※※※
時計と黒板をにらめっこ。たぶん、そんな事してるのは俺だけじゃない。
次は昼休みだし。周りを見てもだらだらしてる奴らはたくさんいた。
キーンコーンカー…
「はい。じゃあ次までに宿…って桜井(さくらい)!授業終わっとらんぞ!!」
「ごめん!宮坂先生、またね」
宮坂先生の怒号を聞きながら教室を飛び出す。だって昼休み終わっちゃうよ。
階段降りてくるくると人ごみを走ると見えてきた教室に顔を出した。
「むつ兄!何してんだよ?」
ぽんと人差し指でほっぺをついてきたのは水無月。そういえばここ水無月のクラスだ。
「あ、今日は水無月に会いに来たわけじゃないんだ」
「は?」
「水無月寂しいだろうけどゴメン」
「ちょっ待て…「っというわけで花本 千尋(はなもと ちひろ)ちゃんいる?」
水無月を無視して教室を見渡すと図書館で見つけた小さな彼女がびっくりしたように俺を見て口を開けてた。
「ちょっと来てもらえる?」
にっこり笑って生徒手帳を見せると彼女は青くなったり赤くなったりして俺の所に来た。俺は彼女の手を取ると走り出した。
「あ、あの?…」
戸惑った顔をして困ったように眉を下げた彼女は何だか可愛くっていつまでも見ていたいと思った。
裏庭まで彼女を引っ張ってきて彼女の手を放して軽く彼女の頭に触れた。
「ごめんね。急に走って…これ昨日落としたよね」
「あ、すっすみません!!拾って頂いてたんですね…ありがとうございます」
彼女は慌てて生徒手帳を受け取ると大事そうに生徒手帳をしまった。
なんだか生徒手帳が宝物みたいな仕草でなんだか悪い事した気分だ。
「あ…あの本…一冊間違えて…」
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