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「では、そこの彼。水晶に手を」
優姫が水晶から手をどけると、次は零が水晶に手をのせた。
「…白の女、口からこぼれる血、銃、純血…。
…貴方は白の女により、何か大切なものを無くすことになる。
…今言えるのはそれだけです。あとは自分で探して下さい。」
白の女―
豊穣院氷儷だと、わかった。
奴には気をつけて動かないといけない、そう決めたときだった。
「ありがとうございました。」
優姫はお代と一礼すると歩みを進めた。
何か、気持ち悪い。
そんな気分になったからだ。
「…帰りは、気をつけて…」
占い師が意味ありげに呟いたのを二人には聞こえなかった。
「…なんか気持ち悪かった…あの占い師さん」
「俺達のことを見透かした感じだったな」
「うん…。じゃあ、帰ろうか。時間もうすぐだし」
「ああ。」
学園に歩を進め、歩いていく。
零は先ほどから嫌な、べっとりとはりつく視線を感じていた。
裏路地から出たときからずっと見られている。
優姫は空を見ながら歩いていて、気づく様子もない。
おそらく考え事をしているのだろう。
「…優姫、階段」
「え?っ…!」
優姫は階段に差し掛かる一歩手前で止まりギリギリセーフだった。
恐らく零が言わなかったらそのまま足を滑らせていることだろう。
「あっぶな…」
「ったく、前を見て歩けよな」
「あはは、ごめんごめ…―」
一瞬の出来事だった。
零の背後からヴァンパイアが走ってきて優姫を階段に落ちるように押した。
零は腕を掴んで引き戻すのを間に合わないと判断し、優姫の身体を抱きしめて一緒に落ちた。
零が落ちる間際に見たものは、優姫を押したヴァンパイアが嫌な笑みで笑っているものだった。
そしてそれがさっきの占い師だったということだった。
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