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「っ…は…っ」
激しい飢えが零の身体に襲ってくる。
零は自分の身体を抱くようにして木にもたれかかった。
もう優姫の血を飲むわけにはいかない。
優姫は零のいないところで貧血で倒れたりしていた。
それを玖蘭 枢から知らされ、零は決めたのだ。
飲まずにやってみせる、と。
でも、頭ではわかっていた。
そんなの無理だと。
認めたくなかった。
自分が奴らと同じ獣だと。
「つらそうね、貴方」
「…お前は…」
誰かの足音がする。
零の前に夜間部の制服を着た女がいた。
今は昼間だというのに。
「こんにちは、錐生零。」
「…豊穣院 氷儷(ツララ)…。純血種が学園に何の用だ」
零は自分に襲ってくる激しい飢えを抑えながら、氷儷と会話する。
相手の白い首筋に目がいき、相手の血を飲みたくなる。
豊穣院氷儷は数少ない純血種である。
髪が灰銀色で、瞳は翡翠のような見るもの全てを魅力する容姿の持ち主だった。
そして、一番人間らしい純血種でもある。
「この制服をみて、わからない?」
「夜間部…!」
「そう、今日転入してきたの。暇だから、少し学園を見てまわろうと思って。そしたらつらそうな貴方がいた。…血をあげましょうか?捨てられたヴァンパイアさん」一歩、また一歩と氷儷は近づいてくる。
零は激しい飢えに立っていることもままならなくなり、飢えに耐えながら地に腰をおろすことになった。
「っう…っは…っ」
「…貴方を見てると私の義妹を思い出すわ。その反抗的な目、澪に似てる。…そういう人ってつい苛めたくなるのよねえ…」
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