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愚か者
その日から、何もしないでも飯が運ばれてきた。
俺の他に何人選ばれたか知れないが、そいつらも皆同じ目にあっていただろう。
貴族共は俺達を、無理やり健康にしておきたいらしい。
「健康な盲人求む」
全く大層な気の配りようだ。
五日後に俺達の無様な有様を、思う存分愉しむための、言わば先行投資ってやつだ。
だが乞食になってからというもの、俺の腹はけち臭い分別なんてものを嫌うようになっていた。
俺は与えられた五日間での、生まれてはじめてのまともな飯に満足していた。
生きているという事は味覚で味わうものだと、盲人になってから嫌という程味わったからだ。
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