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「……何て事だ…。
あの子は治療しても、生きられる保証などないのに…。
ましてや、出産なんて…」
都を帰した後、源一郎は頭を抱え、陽子にそう溢した。
「 本当は都ちゃん…、今一番昇悟君が必要な筈なのに…。
あんなに辛い現実を、ひとりで受け止めて、ひとりで産もうとするなんて…」
「 流産した事にしてくれなどと…、正直これでいいのかどうか…」
「 私には…、都ちゃんの気持ちが分かります。
ましてや、昇悟君はまだ中学生ですから…。だけど…」
溜め息をつく陽子に、源一郎は苦渋の表情を向けた。
「……須藤君、君に頼みがある…」
「 はい?」
「 大学病院に、あの子を連れて行って欲しい 」
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