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昼休み、中庭の自販機にジュースを買いに行く。
そして、このまま午後からの授業はサボろうかと、ぼんやりと考える。
どうせ綾橋くらいとしか喋らないし、その当人がいないなら、学校にいても退屈なだけでつまらない。
「えーと、もしかして君、新堂つむぎさん?」
そんな時だった、その声が新堂の名を呼んだのは。
ベンチに座って俯き加減にパックのコーヒーを飲んでいた新堂は、不意に掛けられた声に顔を上げる。
「やっぱりそうだ!写真の子と雰囲気が似てるから多分そうじゃないかと思った!」
知らない顔だ。高校生とは思えない落ち着いた雰囲気の…しかし、目付きだけは異常に悪い男子生徒が、すぐ正面で新堂を見下ろしていた。
「どなたですか?ナンパならもっとふさわしい場所で、別の人に対して行ってください。」
意図して険のある応答をする。
初対面でいきなりフルネームを呼ばれるのは気持ちが悪い。
それが異性なら尚更だ。
「はは、手厳しいね。それならまずは自己紹介からしとこうかな。俺は『坂上キリエ』三年。ナンパじゃないし、別の人じゃあ意味がない、俺は彩名の友人としての君に用があるんだから。」
「彩名?綾橋のこと?どういうことなの?あなた、綾橋のなに?」
『疑問の多い子だなぁ』と男子生徒は苦笑し、新堂にとって意外な答えを口にした。
「彩名は俺の彼女。つまり、俺は彩名の彼氏ってわけ。どう?納得した……って、なにその意外そうな顔?もしかして知らなかった?彩名に彼氏いるの。」
「知らなかった……。だって綾橋、一度だってそんな話……。」
「ま、あいつはあれで結構照れ屋だからな。教えて冷やかされるのが嫌だったってとこだろ。……それよりさ、君に見てもらいたいものがあるんだけど……。」
坂上は、おもむろに携帯を取り出し、新堂に見せる。成り行き上、見ることになった新堂の目に入ったのはどうやらメールの受信画面のようだった。
件名は『どうしよう』
本文は……
「………『新堂つむぎが、殺人事件の犯人』?な、なにこれ?」
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