第一章『死夜狂咲』

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【囚われの綾橋】時刻不明 『新堂つむぎが殺人事件の犯人。真実が知りたければ、桐陣高校校門前に今すぐにくること。もしも来ない場合、これを最初で最後の通知とする。二度目のチャンスはない。』 こんな差出人不明の悪戯メールに釣られた自分は馬鹿だ。 下らない好奇心で、ウォーキングのついでに行ってみようとか……本当にどうかしていた。 そんな気さえ起こさなければ、こんなどうしょうもない事態には至らなかったはずなのに。 綾橋は後ろ手に拘束され薄暗い一室に転がされたまま、自由の利かない両手を懸命に動かしながら、浅はかだった自分なじった。 殴打された後ろ頭がじくじくと痛む。 頭髪と頭皮を伝って感じる水っぽい熱感から、打撲だけでなく傷つき血が滲んでいることがわかる。 皮肉にもその気持ち悪い痛みが、綾橋の意識を保たせていた。 這いずって幽かに漏れる明かり、恐らくは出口だろうそこを目指そうと試みるが、不意に聞こえた何者かの声に行動を抑制された。 「あれ?なんだ、もう目が覚めたのかい?以外に頑丈なんだね君は。」 背筋に悪寒が走る。間違いなく、この声の主が綾橋を拉致した張本人だ。 「そんな怯えた顔をしないでほしいな。安心してよ、別に君に危害を加えようとは思ってないよ。」 立ち寄った校門前で、後ろから殴りかかって昏倒させたことは危害を加えたうちに入らない。 言外にそう言っている。 楽しそうな声から、それを発する人物が人を傷つけることに何の躊躇いも、罪悪感も感じていないのことがありありと伝わり、全身が総毛立つような恐怖を覚える。
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