第一章『死夜狂咲』

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……それでね、その知り合いから電話があったの。内容は『くねくね見つけた。近づいてみるから実況するね。通話はそのまま。』 だって。その時は冗談だと思ってたから私も笑って『了解しました!一緒にくねくねしてきてください!』とか冗談で返したの。で、それが冗談ですまなかったと気づくのには数分も要らなかったわ。 それでそれで?! ……しばらく適当な雑談してたんだけど、ふと向こう側の足音が止まったの。で、どうしたの?くねくねについたの?って聞いたわけ。そしたら……。 そしたら?! 一瞬息を飲むような音が聞こえて『あ、あ、あ、あ、』って震える声でその子がいうの。怖がらせる演技だと思って『ちょっと!変な声出さないでよ!』ってちゃかすけど『あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、』って止まらないの。流石に怖くなって『どうしたの?!ねぇ!』って呼び掛けたらそのとたんに…… 『ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!』 抑揚もない機械音声みたいな叫び声を上げ始めたの。これは流石に冗談じゃないと気がついて怖くなって通話を切っちゃった。 それからすぐに、携帯のGPS機能で居場所を特定して、そこに向かった。心底怖かったけどね。念のために警察にも事情を話して…くねくねの下りは勿論言わなかったけど。悪戯だとか思われたくなかったし。 で、そう遠くなかった目的地にたどり着いた私は、信じられないものを見たの。『くねくね』が居たわけじゃない。いたのは彼女だけだった、だけど……。 ちょ、なに泣いてんのあんた!
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