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八神
 ̄ ̄
僕、八神啓太は、今日も
朝からバスに揺られている。
中は広いくせに、乗客は僕の
他に4人と、何だかあっけない。
でも皆、小学校からの
僕のともだち。
…皆、ともだち。
それなのに、今は皆それぞれ、
離れて席に座っている。
俊介、敦志、加奈子に晃。
ともだちなのに、皆それぞれ
目が合わないようにって、列を
ずらして座っているんだ。
あんなに仲良く遊んでいたのに。
どうしてだろう?
もやもや。
何だろう、このきもち。
ゆらゆら。バスが揺れる。
なんでだろう。
…なんで?
ガタッ
「…っは…」
はずみで、ひじ掛けから
ずり落ちていた。
どうやら寝ていたらしい。
座っているのは、夢と同じ
バスの中。
せっかく珍しく空いていた
席で眠ることが出来たのに、
夢を見たせいで眠った気が
いまいちしない。
しかも後味の悪い、現実と
そっくりな夢だった。
夢の中の僕らが、出会ったころの
とても幼い子供だったことを
除いては、だが。
「…ッハァーア…」
だが際立って違うことがある。
現実ではこのバスが、いつも
人でごった返していること。
そしてもう、あの4人はこれには
乗っていないということだ。
僕は夢の中で4人を呼ぶ自分を
思い出していた。
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