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「ただいまー!」
「お帰りなさい、桃さん」
桃が元気に玄関を開けると、修道服の女性が出迎えてくれた。桃は靴を脱ぎ、揃えると女性に思いっきり抱きつく。
彼女が"シスター"のマリアさん。出生不明、年齢不詳。俺が赤ん坊の頃から姿形が変わっていないことは、もうツッコム気すら起きない。
ただ解るのは外国人ってことと、俺の"親変わり"ってことくらいだ。
綺麗な青い瞳が玄関に居た俺たちを見つけると優しく微笑みかける。
「お帰りなさい」
「ただいまーシスター」
「ただいま。お風呂入れてくるよ」
「はい、お願いしますね、百合さん」
楓と百合は軽い挨拶を交わすと部屋に戻っていく。
一人残された俺は買い物袋を置くと、凝り固まった腕を揉みほぐし始めた。
「はぁー。疲れた……」
「お帰り、真和」
桃を部屋で着替えるよう促し、シスターは俺に向き直る。雰囲気が一変したな、おい……。
「ただいま、"マリア"。ご飯ならすぐに作るから少し待っててくれよ」
袋を取ろうと手を出した時、そっとマリアは手を重ねてくる。
「はぁー、真和。あなた、今日は何人の業を背負ってきたの?こんなに手を痛めてしまって」
優しく手を取ると、ゆっくりと撫でる。
「大丈夫だよ。別に痛くはないし、明日には腫れもひくよ。注意するのはマリアも一緒だろ?その二重人格が妹たちにバレないように気を付けな」
手を重ね、マリアの手を解こうとする。
親とはいえ、女に手を握られてんだ。テレもする。ましてや、マリアはかなりの美人だからな。
「あら、なんのことかしら~?私はいつも、清楚で優しく慈愛に満ちた修道女でしてよ? うふふ~」
「っていいながら、抓るな!痛たい!」
解こうした腕を抓られる。
「神のご意志です」
しれ、とシスターは曰った。
「シスター、あんた、そう言えば 何でも許されると思ってないか? いつか、天罰落ちるぞ?」
と舌打ちすると腕に物凄い圧迫感を感じた。
「なっ!?」
シスターが腕に抱きつき、その、たわわな胸で腕を圧迫していたのだ。
「あら?心配してくれるの?優しいわね、真和。でも、鼻の下を伸ばしたヤラしいー顔してる貴方にこそ懺悔は必要だと思うの」
にこやかに笑うとマリアは隙の生まれた俺の足を払い、胸ぐらを掴むとそのまま空に投げる。見事な背負い投げ。
"ダーン!"
凄まじい衝撃と共に俺は意識を手放した。
彼女はマリア。俺の親にして格闘技好きの戦う修道女だ。
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