魔王と神様

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「へぇ。そうなんだ」 真和はジュースに口を付けると小さく頷き、コップを置いた。 「おや?驚かないんだね?てっきり、腰を抜かしてしまうかと思ったんだが」 「私もてっきり、ジュースを拭き こぼすくらいは覚悟してました」 神様が担架をしまいながら苦笑し、サタンは真新しいタオルを持って目を丸めていた。 ていうか、二人とも用意が良過ぎる。 「いや、日常的に驚きっぱなしでさ、さすがに鍛えられたっていうか、試練を与えすぎなんだよ、サタンが」 そう。現世での、試練は凄まじいものだった。 平凡、日常、平和な毎日とは無縁の生活を物心ついた時から経験してたんだ。 突発的に襲い来る非日常。 解決策はデタラメでも、確かにそこには、どんな結果も受け入れる覚悟があった。 「えぇ!?それは、どうもすみませんでした」 「徳を積んだ者は嵐が来ようが、地が割れようが、天が裂けようが全てを受け入れて対処してきた。サタン。どうやら、君の試練は無駄にはならなかったようだ」 良かったね、と神様は微笑み、自分も嬉しそうに、磨いたコップを置いた 「真和。立派に成長したようだね。私はとても嬉しく思う。でも、君の生涯はここで終わりではないんだ。この世界に来た以上は、ここで生活して行かなければならない」 「ここでの生活……現世とはやっぱり、違うんだろう?」 「あぁ。大いに違うよ。そうだ。これを渡しておこう」 「これは?」 渡されたのは虹色のカード。 表面には『魔王』と書かれていた。 また、この文字を目にする日が来ようとはね。 まったく、なんの因果やら。 「これは、『アガペープレート』略して『A.P』という。身分証明と財布の役割をする物だ。無くさないように気をつけるんだよ?再発行はできるけど手続きが面倒な上、時間がかかるからね」 「へぇ。身分証明兼財布ね。で、神様。一つ、聞いていい?」 「『魔王』は君のお気に入りだろ?」 「心を読んだのは、さすが、神様と思いたいけど、それは大いに違う!」 「ふむ、サタン。真和はどうやら反抗期らしい。父として、ここは然るべき態度を取るべきだろうか……」 「あ、あはは…」 「こんの―!バカ親が――!」 "ごっ!" 「バカはあんたよ!真和!」 「って――――!」 頭に激しい衝撃を受け、振り向くと馴染みのある顔がそこにはあった。
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