マオウと呼ばれる者

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「はっ……くしょん!……風邪か?」 鼻を啜りながら街を歩く。 「お兄ちゃーん!」 「ん?」 少し歩くと、後ろから高校生と中学生、そして天使のような小学生が歩いてきた! 「おぉ、お前らか」 俺はトテトテと走ってくる小学生を手を広げ迎え入れる。 「お兄ちゃん!」 ぽす!と飛び込んできた小学生を抱き留め、頭を撫でた。 「桃、走ると危ないぞ?この前みたいに転けちまう」 と、道の縁石を見ると、桃もその時のことを思い出したのか、チロッと舌を出して『ごめんなさい』と謝った。 「あ、でも、兄さん。あの縁石、無くなってたよ?綺麗なバリアフリーになってた」 「不思議だよねー。この前通ったら、綺麗に舗装されてたの!何でも一晩であの一帯の縁石が壊されてたらしいよ?」 と追いついた二人が首を捻りながら、俺を見つめる。 「へぇ。バリアフリーね?福祉の心に目覚めた誰かが、舗装したんじゃないのか?」 「あのね、兄さん」 「そんなわけないでしょ?兄ちゃん」 と二人は頭を押さえ、深くため息を吐くと、俺の顔を呆れたように見つめるのだった。 「そんなことより、百合!今日の買い出し、お前だろう!手伝ってやるからさっさと行くぞ!」 可愛い桃を肩車すると、二人を先導して歩き出す。 「今日の買い出し当番は私じゃなくて、姉さんだよ!」 と、百合が慌てて俺の横に並ぶ。 「えー、お姉ちゃん。先週やったもん」 ブータレながら楓も横に並んだ。 「そりゃそうだよ!交代制なんだもの!兄さん、私、姉さんの順番なんだから、当たり前でしょ!」 「えー、違うよー。兄ちゃん、百合でー、百合、兄ちゃんの順番だもん」 「な!?楓姉さん!私が増えて『あー、あー、聞こえなーい!』…ぐぬぬっ~~!姉さーん!」 楓が耳を塞ぎ、足を早めて前を歩く。百合はそれを肩を怒らせて追いかけた。 「お姉ちゃんたち!仲良くするのー!」 桃は頭の上で『むー!』と膨れる。 「桃の言うとおりだ!みんな仲良く協力しないとな!だから、百合!今日の料理当番は、疲れた兄さんの代わりに頑張れ!」 「兄さんまで何言ってるの!」 「それはダメ!ウチで一番料理が上手なの、兄ちゃんなんだから!私、今日のご飯楽しみにしてるんだよ!?」 楓は戻ってくると『メッ!』と指を振る。 「兄さん?私も疲れてるし、シスターに台所、譲っちゃうかも……?」 「くっ……仕方ない……」 身の危険を感じた俺は渋々、頷くのだった。
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