日記 ~無機質な礎~

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私が他の人とずれていると気付いたのは、小学生の初めての運動会の時でした。 生徒はみな浮足立ち、初めてのことに興味を引かれ、得に運動が得意な子供は口にこそ出しはしませんが、青い熱意をちりちりと醸し出すのでした。 浮かれた生徒を注意する先生も、その顔はちっとも怒ったようには見えません。 クラスは、和ましい空気を含んだ穏やかな雰囲気でした。 しかし、私はどうも違うようです。 摘むほどの好奇心も抱くことができないのです。 決して運動が苦手だからなどという、安易な理由からではありません(事実、私は男の子に負けないくらい足がはやかったのです)。 何故まわりの生徒と同じように興味が仄めかないのでしょうか。 それはほんの些細なものでしたが、ここから、果てしない迷宮へと陥ったような気がします。 私は温かな空気に押し潰され、教科書で顔を隠し黙々と泣き続けるのでした。
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