6人が本棚に入れています
本棚に追加
******
……。変。一言で表せばそれ。妙に落ち着かない。
そう思ってサビが中途半端ながら終わった。すると「っあ!」と声とガタリと悲鳴を上げる扉。……。
「何やってるの?」
「べ、別に何もしてないわよ!」
俺が妙に落ち着かなかったのは彼女がずっとこっちを見ていたかららしい。それも結構な目力で。まさか人の視線だとは思わなかった……いや、それは失礼か。
(俺が振り返った時、彼女の顔がすごい形で固まっていたことをここに記しておく)
「……ぴ、ピアノ弾けるんだ」
「うん。白雪さん、まだ帰ってなかったんだ」
「あ、また部活回ってたから」
「そうなんだ」
ほんの少し疲れた笑みを見せる彼女。
相当、色々あったんだろう。彼女の人気ぶりには舌を巻くから。
止まっていた指を動かす。間奏に差し掛かる。俺が一番練習した場所。
雨の強さのような、思いの強さのような、力強くも悲しいような嬉しいような。
馬鹿みたいに曲の感情を考えた場所だった。今となっちゃ関係のないことだが。
――♪~……♪♪ ♪…
曲が終わる。彼女が拍手をする。素直に称賛を示す拍手だった。
最初のコメントを投稿しよう!