放課後ワンステップ【学園】

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「綺麗な曲だね」 「うん、……1番好きだった歌」 「好きだった……?」  しまった。 「あ、あぁ、うん。いい曲がたくさん出るからね。今は違う曲が1番」 「そうなんだ」  今の俺はちゃんと笑えていただろうか。お得意の笑顔で答えただろうか。  少女は目の前で「出来たらもう一回聞きたい……っいや、別にいいっ!」と何故だかあたふたしながら言う。 ……。そうやって俺が少し黙るとまた慌てて「別に弾かなくてもいい!忘れて!」と顔を背ける。  そういう態度は全く似ていないのに、連想してしまうのは、何故?   黙りこくった俺を盗み見るように目線だけこちらに向ける。   ……そうだ、笑おう。笑ってもう一度俺は弾けばいい。 忘れよう、思い出したことなんて。笑顔で塗り潰せばいい、過去なんて。 目の前で今か今かと待っている彼女のために弾けばいい。それに意味はない。 弾いてと言われたから弾けばいい。そう、笑って「いいよ」と言えばいいだけ。 「いい…」 ――ガラッ 「稜揶、お前いつものとこにいろよ!」 「……」 「……」  俺の返答と被るように音楽室の扉がスライドされた。 「あー、……お邪魔でしたね」 「……いいよ、もう。入れば」 「ごめん、白雪さん」 「何が!?」  謝る和傘のみぞおちに強烈なボディーブロー。彼女の照れ隠しは素晴らしくバイオレンスだ。 身悶える和傘に心の中で合掌した。火の粉はかかりたくない。 「笑うなよ、稜揶……」と和傘が息絶え絶えに言うが悪いけど笑顔はデフォルトなんだ。
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