3章・Guardian Angel

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「あの子はもう大丈夫ね」  少女達から離れた場所で、ボウガンのスコープを覗いていたリンは言った。その銃口からは、火薬の硝煙があがっている。 「誰かは知らないけど、助けが来てたみたい」 「ならば、私達がやるべきは1つだな」 「うん……」  そう言って振り返る。その先には、村の広場が広がっており、広場の中央には巨大な岩山がそびえ立っていた。  リンは辺りを見回して、ふと考える。 「どうした?リン」 「少し気になる事があるんだけど……ううん、まずはアレを片付けよ」  疑念を振り払い、ボウガンを構え直す。赤黒く脈打つ様に光る龍の如きそのボウガンを。 「ナル、アーリィ、援護するわ。仕掛けて!」  リンの声と同時にナルが先陣を切る。凄まじい脚力で、百メートルはあろうかという距離を飛ぶように、地を三度蹴っただけで詰める。 「同時に行かせるな。アレには追いつけん」  アーリィが愚痴を零すが、スルーしてリンもボウガンの適性射程圏へ駆けながら、装填しておいた拡散弾を鎧竜の背中へ打ち込んだ。着弾と同時に爆発が散り、鎧竜の岩の様な甲殻を破壊する。  体を休めている所へ攻撃を加えられ、鎧竜は吼えようと大きく首を掲げるが、その瞬間がら空きになった腹部を縦に裂く様にナルが双剣を叩き込む。夜天連刃・黒翼。迅竜ナルガクルガの鋭い刃翼を用いた双刃は硬い鎧竜の甲殻を通し、弱点である腹部を刺激した。  痛みに鎧竜が怯む。その隙を突き、アーリィが腹部に蒼い槍を突き立てる。 「なかなかの甲殻だな。しかし」  手元に付いたトリガーを引く。槍の先が爆発し、衝撃が甲殻を通って肉へとダメージを与える。  アーリィが扱う蒼き銃槍は希少な古龍、ナナ=テスカトリの素材から鍛えられたガンランス、ナナ=ソレイユ。規格外の威力は扱う者を選ぶだろう。  ジャコッ。  リンは弾丸をリロードし、狙いを定める。使う弾丸は通常。狙うは甲殻の僅かな隙間。 「鎧竜……まずは砕かせてもらうね。その鎧…っ!!」  紅黒く輝く銃身。その先に取り付けられた龍頭を模したパワーバレルは弾丸を放つ度に龍の咆哮の如き哮りをあげる。  その銃口が9度、吼えた。放たれた弾丸は全て鎧竜の腹部の甲殻の隙間へ食い込んだ。
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