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リンは鎧竜の甲殻を剥ぎ取り、その質感を確かめる。
「うん……重殻かな。G級だね、この子。それにしても」
リンは倒した鎧竜の巨体を改めて眺めた。
「私達と戦う前から随分ボロボロだったね。見て、アーリィ。あの背中」
リンが指差した先には大きな傷というか穴というか、甲殻が穿たれていた。
「ほう、凄まじいな。あれはハンターにやられたモノではないだろう」
リンは頷く。
「どうして……解るの……?」
ナルが首を傾げて尋ねてくる。ネコミミが一緒に傾いて可愛い。
「んっ……そ、それはね、G級グラビモスの甲殻を力任せにぶち抜いて大穴を開けられるなんて、人間業じゃないからだよ。そして、それが出来る生き物を、私は知ってる」
リンがそう言うと、アーリィが腕を組み、呟く。
「覇竜アカムトルム、か」
リンがコクリと頷く。
「グラビモスを溶岩に引きずり込んで捕食しているのを見たことがあるのよ。甲殻を簡単に噛み砕いて、ね」
片目を瞑り、手元にある甲殻をコンコンと小突きながら言う。
「すごいね……こんなにおっきい飛竜を食べちゃうなんて……う……」
ナルのお腹が悲鳴をあげる。食べる、という言葉に反応したらしい。ばつが悪そうに此方を見て来る。
「あ~、はいはい。とりあえず残った干し肉あげるから、これで保たせて」
干し肉を差し出すと、ナルは目を輝かせて飛び付く。
「リン、ありがとう!」
リンは困った顔を作ってはいるが、仕方がない子ね、とでも思っているのか、表情が若干柔らかい。
「ふ……相変わらずナルには甘いな。私にももう少し優しくしてくれると嬉しいのだが」
一連のやり取りを眺めていたアーリィが呟く。
「いや、それはキミが悪いんだと思う」
間髪入れずにリンが返す。
「ぬっ…私は褒められて伸びるタイプなんだぞ」
とか何とかふざけた事を抜かし出したので、リンはスルーするのであった。
グラビモスに再び目を向ける。
(この子も……必死で逃げて来たんだろうな。……でも、私は人間だからキミの気持ちは理解してあげない)
リンはそっとグラビモスの頭に手をかざして、目を瞑った。
と、背後から足音が聞こえる。振り返ると、そこには青白いキリン装備を纏ったリンと同じくらいの歳の少女が立っていた。
「こんにちは、私は――」
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