3章・Guardian Angel

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 女性の羽ペンを持つ手がわなわなと震えている。 「ほらほら、早くサインしてよ。報酬報酬~」  対してリンが腰に手を当て、鼻歌混じりに言う。 「くぅぅぅっ!わかってますよぉ!今やりますから急かさないでくださいっ」  女性、マティアは震える手で依頼書にサインをし、リンに報酬金を手渡す。  リンは報酬を笑顔で受け取ると、ギルドの酒場のカウンターへ小走りで去って行く。  その後ろ姿を眺めながら、マティアは大きく溜め息を吐く。村人は全員無事であったし、鎧竜等の討伐も確認された。しかし、何か悔しい。そこへマスターがやってくる。 「G級の火竜に鎧竜、報告通り腕は確かな様じゃな」  見た目は小さな男の子の様だが、その実相当な年齢だという竜人は煙管をぷかぷかと吹かしている。 「これでうちのギルドにも活気が出てくるじゃろ。それで依頼を受けまくって他のギルドにもひけをとらん様になるわ!」  そう言って年寄り臭い笑い声をだすマスターを尻目に、マティアはまた大きく溜め息をつく。 「そう上手くいくといいんですがねぇ……」  火竜といい鎧竜といい、この辺りでは確認されていなかったG級モンスター。何となく、引っ掛かりを感じる。 そんな事を考えながら楽しげに食事をしている3人の少女達を眺める。 「ほーんと、有り得ないわぁ。色々と」  そう言ってマティアは制服の懐にある、軽くなった財布の感触を噛みしめる。  村人達は安全が確認されるまで街で受け入れる事になった。無論、欠けた人間は無く、全員無事という出来過ぎた結果で。
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