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4章・湿地に潜むモノ
「っかぁ~!たまんねえ、生きてるっていいなぁ?ラーズ」
安酒を一気に飲み干し、男は言った。
「呑み過ぎだよウィット。病み上がり何だからもう少し……」
ラーズと呼ばれた青年は酒を呑む男を制する。
「チッ、これだからてめぇは。見ろよこのギルドの盛況っぷり。こいつぁ祭りだ!俺等がベッドでオネンネしてる間に賑やかになりやがって」
酒場を見渡すと新米から中堅程度と思われるハンターがごった返しており、急遽増員された女中が慌ただしく料理をテーブルへと運んでいた。
「あぁ……あれから二週間、かな?ウチに来たっていう凄腕のチームが噂になって、他のギルドからもハンター達がこぞって移籍してきたって」
アプトノスのサラミをつまみながらラーズは説明する。
「まぁ、色々尾ひれついてる噂みたいだけどね。フルフルを槍で刺してブン回して、壁に叩きつけた、とかさ」
ブフッ、とウィットは吹き出すが、ラーズはサッと自分の飯を守る。
「くははっ!そいつら女なんだろ?どんなメスコンガ共だよそりゃあ!!いっぺん見せてくれよ!くははははっ!!」
大声で笑うウィットの背後に影が迫る。次の瞬間、ラーズの視界からウィットが消えた。
「ちぇいさー」
「へぶっ?!」
同時にラーズの視界には見たことの無い白い鎧を来た少女が現れた。綺麗な回し蹴りを放った格好で。
少女はラーズににっこり微笑んできたので、ラーズも強張った笑みを返した。
「こんにちは♪ご紹介に与りました、噂のメスコンガでぇす♪」
ゾワッと。ラーズの背筋に怖気が走る。凄まじい殺気。
「いいいいいや、あのののの、僕は何も……」
「アーリィは確かに馬鹿力だし、コンガの類だけど、私やナルまでアーリィ扱いは非道くない?」
そう言ってラーズの前の席にどかりと腰を降ろす。その左に蒼い装束の女性が座りながら
「私もか弱い女なのだが?というかその言い方だと私はコンガ以上か?」
「少なくともキミのは噂じゃないじゃない……」
白い鎧の少女の左隣にちょこんと黒い装束の少女がいつの間にか座っており、女中に注文している。
「お肉と……お魚……あとご飯と……」
そんな少女の頭を白い少女はぽんぽんと撫でながら、
「あぁ、もう片っ端から持って来てくれる?お代は後ろでのびてるのと、そこの彼が支払うから」
畏まりました、と笑顔で女中は去って行く。
同じく笑顔な少女達とは対象的に、ラーズは青ざめていた。
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