53人が本棚に入れています
本棚に追加
目の前には強張った青年ラーズと腫れた顔でぶすっとしている男ウィットがいる。
「ナル、おいしい?こっちもおいしいよ~」
「もくもく……こくん」
とても美味しそうに食べる女の子だなとラーズは思った。
「ふむ……ほうひえば、んぐ。ラーズにウィット、だったか。見たところ新米のハンターの様だが……はて、どこかで見たか?」
アーリィは巨大な、厚さ20cmはありそうなドラゴンステーキを頬張りながら尋ねた。
「ええっと……多分あの……二週間ほど前にあなた達がここに来た日に見たんだと思います。あの時僕達はほとんど意識がなかったみたいで、あなた達の事はよく覚えてないんですけど」
アーリィは成る程と頷き、
「ならばよく覚えておくといい。私はコンガではないぞ」
(ああ……まだ気にしてたんだ、この人)
そんな事を考えた瞬間じろりと睨まれ、ラーズはビクッとする。
最初から目も合わそうとしていないウィットが突然立ち上がる。
「オイ、ラーズ。もう行くぞ」
「え?ウィット、行くって?」
察しの悪いラーズに苛つくようにウィットは答える。
「仕事だよ。受けてたろうが、沼地のドスイーオス狩りをよ」
「え、あ、そうだけど、そんなに急がなくても……」
ほんとに察しの悪いヤツだ、と呆れた顔をして、ラーズを引っ張り立たせる。
「そういう訳でな、メスコンガの顔も見られたし、悪ぃが行ってくるわ」
そのセリフにリンはこめかみに怒りの四つ角を浮かべながら、
「新米クンにはピッタリの仕事よね。ここはちゃんとツケといてあげるから、しっかり稼いできなさぁい」
笑顔で見送る。
「ちっ、新米にタカンじゃねぇよ」
そんな2人に、食欲全開な四次元胃袋少女が、食事の手。いや、口を止め、
「お仕事……?気をつけてね……ご飯……ありがとう」
と、見送ってくれた。この時ラーズは何故か半泣きになってしまったらしい。
席が空いたので、アーリィは反対に移り、またドラゴンステーキを頼む。
ナルはテーブルに並んだご飯をちょうど平らげ、また注文している。どこに入れてるんだろう、ほんとに。
そんな2人を見ながら、食事を終えたリンはチラッと見る。そこには乗っていたモノが綺麗に片付けられたお皿達がある。
最初のコメントを投稿しよう!