4章・湿地に潜むモノ

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「……アーリィ、何が言いたいかわかってるよね」  リンは木々の間を縫うように張っている蔦に変なポーズで絡まっている。 「動けない……」  ナルは蔦に簀巻きの様になっていた。 「あ、あはは……仕方ないですよ、リンさん……」  桃色のフルフル装備の少女がこれまたびっちりと絡まっている。 「ふむ……ハンモック変わりにちょうどいいな。ん?何だ。そんなに睨むな」  若干艶めかしいポーズで絡まるアーリィに殺意に満ちた視線を送るが、ヤツは動じない。  大体何故こんな状況になったかというと……。  フルフル亜種の装備に身を包み、金色の片手剣、ゴールドマロウを持った彼女、名前はマリという。  2年前とある事件で彼女の住む村を襲う飛竜討伐をリン達が助力し、それ以来一流のハンターを目指して2年でG級ハンターにまでなったらしい。その彼女が……。 ――2時間前、ネコタク内。 「噂で皆さんらしき人があの街にいるって聞いて来たんです!こういうヘンな依頼は皆さん向けだと思って!」  爛々と目を輝かせるマリ。 「いや、ヘンな依頼ばっかり受けてる訳じゃないからね?」  違うんです?とばかりに首を傾げてくるマリとナル。ちょ、何でキミまで。 「ふむ、しかし不可解な依頼だな。たかがショウグンギザミの討伐に20万Zとは」 「そうなんですよ!しかもここ。先ずは同エリアに生息するダイミョウザザミを捕獲して、指定のエリアに運搬、そこで待機せよ」  聞くほどに不可解というか怪しくなってくる。まぁ報酬からすでにマトモな依頼だと思っちゃいないのだが。 「待機後の事は何にも書いてないね。行けばわかるって事かな?まさかザザミを餌にギザミを釣れってのかな。トトスじゃあるまいし……。」  まぁ怪しい依頼ではあるが、自分達なら少々の事は大丈夫だろう、と楽観的に考えるリン。  それから約1時間後。  目的の沼地に辿り着き、探索を開始する。先ずはダイミョウザザミを探さなくてはならない。  ザザミやギザミは一応蟹ということだが、見た目としてはヤドカリに近い。最も飛竜の頭骨なんかを宿にした巨大な種であるのだが。 「あいつらあんまり好きじゃ無いんだよね。矢弾が効きづらくてさ。美味しいけど」  ナルもウンウンと頷く。 「そうですね~。爪の身なんか引き締まってて……」 「そそ、ザザミソをタレで解いてそれに浸して食べたり!」  ……実にお腹の減る会話だ。
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