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「な?」
どや顔でリンに振り返るアーリィ。
リンはナルの手を取り、クルッと向きを変えて、走り出す!
「このアホぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
叫びながら逃げるリンに早足で追いつき、アーリィが返す。
「むっ、失敬な。ちゃんと考えてやったのだぞ」
ビキィ!!リンのこめかみに青筋が浮かぶ。今にも血管が切れそうな程に。
「そんなに蜂の巣になりたいの……?」
背中の武器に手を回そうとすると、
「リン……前」
ナルの声で正気を取り戻したリンは正面を見る。森を抜け、開けた空間が広がっており、遠くの景色まで見渡せた。その先には……
「街……?やっと着いたっ!!」
ちょっと目を潤ませながら喜ぶリンに
「結果おうらい、だな」
ポンと肩を叩いてアーリィが言うと、またリンの青筋が切れそうな音をたてていく。しかし。
ゴオォォォッ!
頭上から火竜の咆哮が木霊する。火竜リオレウス。空の王と称され、空中を悠然と舞いながら地上を焼き払うのを得意とする。
地上に降りその牙で獲物を襲う事もあるが、すぐに空高く飛び上がる習性は、狩人には好まれない。不慣れな狩人達には強大な壁として立ちはだかるのだが……。
「……振り切るのは無理みたいね」
リンの言葉にナルがコクンと頷く。
リンは背中の武器を手に取り、覆っている布切れを剥ぎ、組み立てる。
それは紅黒いヘヴィボウガン。禍々しく、鈍く光る銃身は、さながら脈打っている様に見え、先端部に取り付けられたパワーバレルは、龍の頭部を模している。まるでボウガンそのものが、一柱の龍である様に。
リンは少女にはおよそ不似合いなそれを、片手で火竜に向ける。
「空の王……ね。要はただ高いとこ逃げ回るだけの臆病者〈チキン〉じゃない」
火竜的には運の悪い事に、彼女達は、〈不慣れな狩人〉ではない。
「ごめんね、元々うちのアホが悪いんだけど……」
ポーチから出した貫通弾を装填しながら、リンは言う。
「ちょっと狩っちゃうね……!」
紅黒い砲身から龍の咆哮の如き音と共に、火竜目掛けて弾丸が放たれた。
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