1章・遅刻した望み

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「あのぉ~……」  静かに開かれた入り口に、少女が顔を覗かせている。  キッと睨むマティア。少女がビクッとする。 「どちら様?今立て込んでますから依頼は受け付けないですよ」  その台詞は刺々しい。 「い、いえ。依頼でなく、今日からここにお世話になるんですけど……あはは……」  マティアの何かがキレる。これが。この少女が。この自分より幼い子が、腕利きハンター?アホ毛をしょんぼりさせた頼りなさそうなこの娘がっ! 「……そう。私はちょっと飛竜討伐に出かけるから、アナタは怪我人の面倒看ててくれます?」  投げ捨てる様にマティアは言う。すると少女は戸惑う様に。 「えっ?飛竜?よくわかんないけどそれなら私達が……」  マティアはツカツカと少女に歩み寄り、 「アナタには任せられそうも無いって言ってるの。だから……」  ムッと少女が不機嫌な顔をしてマティアの言葉を切る。 「遅くなったのは悪かったけど、いきなり何かな?キミ」  2人の間に漂う険悪な空気を無視してか読めずか、後ろから女性が歩み出てきた。 「せめて私達も中に入れてくれ。おや、随分人が多いな」  さりげなく女性の陰からもう1人の少女が、近くのテーブルの上に菓子を見つけて素早くそちらに向かって行く。  マティアと睨み合う少女とお菓子にまっしぐらな少女をスルーして、女性の前にギルドマスターが歩み出てくる。  少年の様に見える若い竜人。口の端に煙管をくわえている。 「来たばかりで悪いんじゃが、一仕事してもらえんか?」  女性は、ふむ、と一瞬考えて、 「煙草は大人になってからだ」  と、マスターから煙管を奪う。 「それと」  女性は睨み合う少女の方に目をやり、 「私ではなくあのアホ毛に言うのだな。リーダーはあいつだ」  くるくると煙管を回しながら、女性は言い、もくもくとお菓子を頬張る少女の向かいの席に腰を下ろしにいく。  マスターは奪われた煙管を気にかけつつ、マティアと少女に目をやる。 「マティア、ちと下がっておれ。討伐はこの者等に任せる」 「っ?!でも……」  マティアの言葉を遮り、少女に声をかける。 「あなた方の事は書簡である程度聞いておる。今はゴタゴタしてての。挨拶替わりに一つ、狩りに行ってもらえんか?」
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