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「あのぉ~……」
静かに開かれた入り口に、少女が顔を覗かせている。
キッと睨むマティア。少女がビクッとする。
「どちら様?今立て込んでますから依頼は受け付けないですよ」
その台詞は刺々しい。
「い、いえ。依頼でなく、今日からここにお世話になるんですけど……あはは……」
マティアの何かがキレる。これが。この少女が。この自分より幼い子が、腕利きハンター?アホ毛をしょんぼりさせた頼りなさそうなこの娘がっ!
「……そう。私はちょっと飛竜討伐に出かけるから、アナタは怪我人の面倒看ててくれます?」
投げ捨てる様にマティアは言う。すると少女は戸惑う様に。
「えっ?飛竜?よくわかんないけどそれなら私達が……」
マティアはツカツカと少女に歩み寄り、
「アナタには任せられそうも無いって言ってるの。だから……」
ムッと少女が不機嫌な顔をしてマティアの言葉を切る。
「遅くなったのは悪かったけど、いきなり何かな?キミ」
2人の間に漂う険悪な空気を無視してか読めずか、後ろから女性が歩み出てきた。
「せめて私達も中に入れてくれ。おや、随分人が多いな」
さりげなく女性の陰からもう1人の少女が、近くのテーブルの上に菓子を見つけて素早くそちらに向かって行く。
マティアと睨み合う少女とお菓子にまっしぐらな少女をスルーして、女性の前にギルドマスターが歩み出てくる。
少年の様に見える若い竜人。口の端に煙管をくわえている。
「来たばかりで悪いんじゃが、一仕事してもらえんか?」
女性は、ふむ、と一瞬考えて、
「煙草は大人になってからだ」
と、マスターから煙管を奪う。
「それと」
女性は睨み合う少女の方に目をやり、
「私ではなくあのアホ毛に言うのだな。リーダーはあいつだ」
くるくると煙管を回しながら、女性は言い、もくもくとお菓子を頬張る少女の向かいの席に腰を下ろしにいく。
マスターは奪われた煙管を気にかけつつ、マティアと少女に目をやる。
「マティア、ちと下がっておれ。討伐はこの者等に任せる」
「っ?!でも……」
マティアの言葉を遮り、少女に声をかける。
「あなた方の事は書簡である程度聞いておる。今はゴタゴタしてての。挨拶替わりに一つ、狩りに行ってもらえんか?」
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