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マスターに声をかけられ、リンはギルド内を見渡す。
そこらにはボロボロのハンターや、数人の村人、中には小さな子供もいる。
「村を飛竜に襲われたらしくての。うちのひよっこハンター共が村人を連れ、命からがら逃げ帰ってきた訳じゃ」
村人の方に目をやると、じっと訴える様に此方を見つめている。助けてくれと。ギルドの奥からはボロボロのハンター達の視線を感じる。仇を討ってくれと。
リンはギルドのショップにずかずかと向かうと、置いてある弾薬をポーチに詰め始める。
「ちょ、ちょっと!」
「急ぐんでしょ。キミは早くネコタクなり馬車なり準備して」
そう言って煩い受付嬢を流しながら弾薬を補充する。
それを見たナルとアーリィは、何も言わず立ち上がる。
「2人とも。要るものあれば持って行って。受付嬢さんのおごりだってさ」
「なっっ!!」
その言葉に反応してマティアが足を止めるが、マスターに促され、渋々準備に戻る。
「飛竜の情報はあるの?」
準備を進めながらリンはマスターに尋ねる。
「村人やうちのハンターの話を総合すると恐らく、鎧竜じゃ。はっきりとは言えんが」
「ん、そっか。まぁ何とかするよ」
リンは軽い調子で答える。
「あ、あんたら……大丈夫なんだよな?」
村人の一人が口を開くと、他の村人達も口々に不安を呟き始める。無理もない。倒れているハンターと見比べ、華奢な少女が2人に女性が1人。端から見れば不安にもなるのではないか。
リンは不安気な村人達を一瞥すると、軽く溜め息をつき、思い出した様に。
「マスター、街の外にいた兵士さんにお土産を〈預けて〉あるから、ギルドで受け取ってもらえると助かるんだけど」
マスターはピクリと眉をひそめたが、頷いた。
「ネコタク、出せます!早く来なさいあなた達!」
マティアの声が響き、そちらへ向かおうとすると。
「待って!」
背後から幼い声が聞こえ、振り返る。そこには、目に涙を溜め、口をぎゅっと結んだ小さな少年がいた。
「カナちゃんがまだ村にいるんだ……お願い、お姉ちゃん!助けて……」
少年の悔しさが伝わる。自分には何も出来ない。頼るしかない。情けない。そんな心を飲み干して、リン達にすがりつく。他の村人達も同じ気持ちだろう。
だから。
リンは笑顔で頷くだけ。
代わりにナルが少年に言う。とても強い笑顔で。
「大丈夫……リンは助けてくれる。必ず」
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