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ニャーニャーニャーニャーニャーニャー……。
「……何コレ。スッゴいんだけど」
猫の鳴き声が響きまくる中、当然の疑問を投げかける。
「リン……アイルー……すごいたくさん……」
「ニャニャ、ハンターさん、初めてかニャ?これは緊急急行ネコタクニャ。20匹のアイルーによって、20猫力のパワーを実現!通常のネコタクの10倍の速度!……だったらいいニャ」
「違うの?!」
「いやあ……ペダルこぐのもなかなか大変なのニャー」
馬車に馬の代わりに長い複数人でこぐ自転車の様なモノがついているのを想像して頂きたい。それを猫が必死でこぐ。これが緊急急行ネコタクである。
「いやまあ確かに普通のより速いけど……何か申し訳なくなってくるわ」
「リン、リン。すごいよ……あの一番前の猫さん、寝ながらこいでる」
「いや、あれは……バテてぐったりしてるんじゃないかな」
珍しいモノを見てはしゃぐナル。
それとは対象的に静かに腰をかけるアーリィに気づく。
「流石に落ち着いたものね。軽く食事でもとっておく?」
食事という単語に反応したのか、ナルが嬉しそうにネコミミをピクピクさせながらこちらを向く。くどいようだが、ネコミミは髪である。
「はい、ナル。少ないけどね」
干し肉を取り出し、渡すとナルは自分の席に戻り、ゆっくり噛み締めている。
「アーリィ、キミも……ん?」
「……すぅ……すぅ」
寝ている。この鳴き声と激しい振動の中、〈目を見開いたまま〉寝ている。
「落ち着き過ぎでしょ?!ってかこわ!目ぇこわ!いやもうキミは何から突っ込めば?!」
そんなやり取りを端から見ていると、彼女達はまだ幼く、本当にハンターなのかとさえ思うかもしれない。
ネコタクに揺られ、そうこうしている内に、村が目前に迫ってきた。
「見えてきたニャー。あの村ニャ」
リンは窓から顔を出し、村の方を見る。煙が上がっている。鎧竜のブレスで家屋に火でも着いたのだろうか。
リンは布にくるんだ自分の武器の感触を確かめる。
「今日はもう一働きね」
そう呟いた少女の横顔からは先ほどまでの幼さが消え、凛とした雰囲気さえ漂わせていた。
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