不敵な男

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その事件が起きてから二日後の午後。 私、刑事の高田は、私立探偵の香野の事務所に居た。 「なんでも、警備員達の話しによると、まるで空中を歩くか飛ぶかしたように、向かいのビルに居たそうですよ」 私が事件の資料を見ながら香野に言った。 香野は、興味ありげに資料を覗きこみながら言った。 「空中を歩く男ですか。これは私の好奇心をくすぐりますね。 それで、盗まれた物はなんなのですか?」 私は、資料をぺらぺらとめくりながら、言った。 「絵画ですね、なんでも2000万ほどする絵画だそうです」 「なるほど、盗んだ物は絵画。 私は、この事件の本当に注目すべき点が分かってきましたよ。 犯人の逃走の仕方が派手で印象的ですが、それは注意をそらすためのパフォーマンスなのです。 本当に注目すべきは、犯人の侵入方法です。 あのビルは今、絵画の展示会があって、そうとうに警備が厳重です。 ですが、犯人はあっさり侵入して絵画を盗んでいる。 この資料によると、がくぶちから絵画を外している。 警備が厳重な中で、普通はそんな事はできない。いつ警備員がくるか知れないなら、がくぶち事盗むのが普通です。 これらを総合すると、重点をおくべきは、犯人の侵入方法です。 それが分かれば、おのずと空中を歩いた方法もわかるでしょう」
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