不敵な男

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私は香野に言った。 「つまり、事件がおきた夜に犯人は侵入した。 犯人は、逃げた時と同じ方法で侵入したのでは? なんらかの方法で、空中を歩いて」 香野が私に言った。 「それはきっと不可能ですね。まだはっきりとは断言できませんが、空中を歩けるのは、逃げる時だけなのだと思います。 あの不適な男は頭がいいですよ、本当に」 また香野独特のはぐらかしだ。 こう言った時の香野は、たいてい謎の答えを見付けている。だが、あくまでも正解に近い答えの仮説であって、しっかりとした裏付けがあるまでは、しっかりと説明しないのだ。 もう香野の頭の中では、事件の全容が、ほとんど見えているのだろう。たかだか1時間ほどの私との会話や資料を見ただけで。
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