第三章

3/11
前へ
/20ページ
次へ
---2時間後--- 「終わった…!!」 私はようやく明日締め切りの仕事を終わらせた。 (ハァ…これでやっと休憩がとれる! コーヒー、コーヒー…) 「チーフ、ちょっとお時間よろしいですか?」 一息つけようと立ち上がった丁度その時、若い女性社員が話しかけてきた。 「え…ええ、いいわよ。どうしたの?」 「来週行われる会議に使う資料のチェックをしていただきたいのですが…。」 そう言って女性社員は10枚程度の資料を私に差し出す。 (仕方ない、コーヒーはこれが終わってからにするか…。) 「わかった。それじゃ、この資料は一旦預かるわね。」 「はい。よろしくお願いします。」 私が資料を受け取ると、ペコリと頭を下げて自分の仕事へと戻って行った。 そして私は、お楽しみはもう少しの我慢だ!と気合を入れなおし、チェックに取り掛かった。 しかし… (なんなのよッ、次から次へと…ッ!!) 私は先程よりも大変な事になっていた。 チェックが終わってその資料をさっきの女性社員に渡し、コーヒーを淹れようとポットの近くまで移動していると、色々な説明などに用いるための大量のDVDを床に落としてしまった女性社員に出会った。 そしてそれを運ぶのまで手伝って戻ると、会議の始まる時間だと気付いて慌てて会議室に駆け込んだ。 会議が終わり、戻ろうとすると今度は専務に呼び止められ、新たな仕事を頼まれてしまった。 結局コーヒーには辿り着けないまま、再びデスクに向かう。 (ハァ…体、キツ…) 朝よりも咳をする回数が増え、体力の限界もなんとなく感じていた。 すると、1人の男性社員がバタバタと駆け寄ってくる。 「そんなに慌てて、どうしたの?」 「す、すいませんッッ!!」 走ってきた男性社員はいきなりバッと頭を下げる。 体調の悪い私にとっては、頭に響く程の大声である。 「…何があったの?」 「その…先月分の会計がどうしても、あ…あわなくて…ッ」 私はチーフという立場もあり、私の下に就く社員達には金銭に関する事だけはちゃんとするように指導してきた。 いつもならここで徹底的に指導するところだが、今日は頭がボーッとしてそれどころではなかった。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加