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ハッとして目を開けると、私は克己の腕の中にいた。
顔を上げると、5㎝程先のところに克己の顔がある。
眼鏡の奥の瞳が私を見つめていた。
私はその顔の近さと、弱さを見透かされたことで自分でもわかる程に赤くなった。
「!!…放してッ…!」
その何もかもを貫き通すような視線に耐え切れず、ドンッと彼の体をつき離した。
「…ッ、あなたなんかの力は借りないッ…!!」
頭の中が真っ白になり、何も考えられない。
気が付けばそんな言葉を放っていた。
「---…そうですか。じゃ、お先に失礼します。」
克己は素っ気なくそう言うと、荷物を持って出て行った。
私は何故か突き放されたような感じがしてならなかった。
(…悪い事、言っちゃったかな…。次会ったら、ちゃんと謝ろう…)
何も考えられず、無意識に言った言葉とはいえ、私は自分の言葉に対して反省した。
(早く終わらせて帰ろ…)
私は椅子に座り直して仕事を再開した。
だが、思うように進まない。
(…体壊してる場合じゃないのに…。仕事もまだ残ってるし、会計もやっぱり合わないし…)
もう体力の限界だった。
額からは汗が流れ、呼吸も速く息苦しい。
視界も少しボヤけていた。
(早く…やらないと…)
そこで私の意識は途切れた。
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