第三章

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「ん…」 気が付くと、私の視線の先には白い天井があった。 どうやら私は休憩室のソファーに寝かされていたようだった。 「あれ…、なんで私ここに…?」 1人で仕事をしていた後からの記憶がない。 誰かに会った覚えも全くなかった。 「一体誰が…」 ふと視線を下ろすと、私の体に毛布がかけてあった。 毛布の上には1枚の紺色の上着が広げてかけてある。 その上着には見覚えがあった。 「…これ…、遠藤君の…?」 それは確かに克己の上着だった。 「あ、目が覚めましたか?」 声がした方を振り向くと、1杯の水と薬箱を持った克己の姿があった。 「…どうしてここに?帰ったんじゃなかったの?」 私はさっきから思っていた事を素直に聞いてみた。 すると克己は静かに口を開く。 「途中で引き返してきたんです。そしたら案の定、倒れてますし。まぁ、ここまで高熱だとは思いませんでしたけどね。…ハイ、この薬飲んで下さい。」 質問に答えながら薬箱の中を探っていた克己は、選んだ薬をケースから取り出し、水の入ったコップと共に私に差し出す。 私は何も言わずに、言われた通りにした。
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