第三章

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               「いやいや、そんなに謙遜しなくてもいいんだ。これは胸を張っていい事だぞ!これからもこの調子で頑張っていってくれ、我が社のホープ君!」 ハッハッハッハッと笑いながら、私の肩をバンッと叩き、どこかへ行ってしまった。 私の頭には未だに『?』マークが浮かんでいる。 (ど…どうなってるの…!?) 頭の整理がついていない私をよそに、昨日の男性社員が近寄ってくる。 「チーフ、ありがとうございます!!チーフが会計表に書いてくださった通りにやってみたら、ちゃんと先月分、合いました!」 「え…、私があなたに会計表を渡した…?」 「あれ、昨夜私が帰った後にデスクに置いてくださったの、チーフじゃないんですか?」 記憶にないため質問してみると、逆に質問されてしまった。 私は男性社員の言葉に気になる部分があった。 (昨夜…?) 考え込んでいると、不思議そうに見つめている男性社員が目に入る。 「チーフ?」 「あッ、そ…そうそう!昨夜は忙しかったから、置いたのを忘れてたわ!」 まどろっこしくなりそうだったので、とりあえず私は自分がしたように装った。 「そうだったんですか。お忙しいところ、すみませんでした!本当にありがとうございました!」 私の返答に納得すると、お礼を言って仕事に戻っていった。 私は『昨夜』という言葉を聞いて頭に浮かんだ人物を探し始めた。 もちろん、お礼を言うためである。 そして謝罪も。
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