失恋

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もう一時間目が始まった頃だろうか。 通学路途中のカフェで、僕は今、今期おすすめのストロベリーティーを飲んでいる。 その赤い湖面に、飛びきり大きなため息をひとつ、落とした。 水面がぶるっと波打って、そこに映る僕の顔を歪めた。 いや 歪んでいるのは、僕の顔の方だろうか…。 昨日彼女にフラれた。 ただそれだけ。 そう、ただそれだけだ。 "好きな人ができたの" 電話口、たった一言だった。 付き合っている間に交わす言葉を引き合いに出すほどバカじゃないつもりだ。 だけど 僕の心に甦ったのは "ずっと一緒だよ" の言葉。 それの証のようになっていた、左手薬指お揃いのリング。 それを捨てた瞬間、僕は失恋した。 それだけなのに、こんなにも世界がいけすかない。 僕の心は大雨なのに、 秋の空は知らん顔で飛行機雲を走らせているし。 僕の心は今にも割れそうなのに、隣の席のサラリーマンは貧乏ゆすりをかれこれ三十分続けている。 テーブルの上のシュガーポットがカタカタと音を立てる。 ああ割れちゃうよ、 僕のガラスのハートが。
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