遭遇

2/8
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
 今宵は満月。  只今夜中の二十三時。  雲一つ無く、光を遮るものがないために、比較的に夜の道は明るく照らされている。  夏を手前に控えた現在の季節は涼しく。丁度良い気温の為に、暮らしやすくなっていた。  そんな心地よい風が吹く中で、小さなコンビニの袋を右手に携えた少女が一人、息を切らして走っていた。  …………全速力で。 「なんで私がこんな目に遭わなくちゃいけないの!?今日は翔太(しょうた)のアイス食べちゃったくらいしか悪いことしてないのにぃ!!」  白と紺色を基調としている制服を着用し、まだあどけない顔立ちの少女は、今にも泣き出しそうな表情だ。  月明かりだけでなく、外灯も彼女の足元を点々と等間隔に照らし、その中で黒とも茶色ともとれるような、肩まで伸びた美しい髪が揺れていた。  そんな彼女が解っていることはただ一つ。  『全力で逃げなければならない』ということのみ。  追われている最中で、少女━━━━━━『不知火晶子(しらぬいしょうこ)』は、なぜこうなってしまったのかを考え続けていた。  勿論、何を考えた所で解決策が浮かび上がってくるわけではないことを、晶子は知っている。  だが、あまりにキッカケが唐突で、奇妙で、謎めいている為に、考えずにはいられなかったのだ。  事の発端は、約三十分前。  晶子が弟のアイスを食べてしまった時から始まる。 ━━━━━━━━━━━━━━━
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!