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「またかよ姉さん!」
漆黒で染められた屋根瓦が特徴的な、二階建てのとある一軒家の中で、一人の少年が階段を駆け上がり、正面にある扉を勢い良く開いた。
「ふぇ?」
「『ふぇ?』…………じゃねぇ!!また俺が買ってきたアイス食べたろ!?」
四方八方に淡い色の茶髪が飛び出し、ワックスをつけているかのように見える少年━━━━『不知火翔太(しらぬいしょうた)』は、布団の上にうつ伏せで、寝そべりながら漫画を読みふけっていた姉の晶子に対して眉をひそめた。
「今月になってもう四回目………………姉さんはいつになったら理解してくれるんだ!」
「いや、あの……その……。ち、違うの。アイスが口の中に吸い込まれるように……こう……スルスルッと」
「なんでさり気なくアイスのせいにしてるんだよ」
「………………てへっ」
可愛らしく舌先を出し、右手を頭に添える晶子。
そんな全く反省の様子が無い晶子に、翔太の怒りは臨界点を難なく突破した。
「…………何回も」
俯き、プルプルと動き始める翔太。
「?」
「何回も何回も何回も何回も何回ももももももも…………」
翔太の体の震えは、徐々に大きくなっている。
「あの~翔太クン?」
いつもとは大きく違った、ただならぬ空気を醸し出す翔太に、晶子は危機感を感じずにはいられなかった。
(ま、マズい。何か爆発しそう)
これは流石に手を打たなければと晶子は考え、わざとらしく両手を合わせ、翔太に提案した。
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