序章

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 城下町から一番遠い関所が破られた。  王は報告を聞くなり直ぐに兵を送る手筈を整える。 「早馬によれば、敵は万にも届くほどの大軍であるとのこと」  隣に控える大臣が報告する。 「……なんと、我々の全軍をしのぐ数ではないか!」 「はい。しかも、倒しても次から次に新たな敵が湧き出してくるようで……」  王はギリリと歯を噛み締めた。そして同時に驚愕する。  魔物とは、決して人とは共存し得ない生き物である。ゆえに、時に群れを成して人々の生活圏を脅かすこともある。  しかし、彼らが軍を組織するなどという話は、彼は聞いたことが無かった。  したがって、直ぐに一つの結論に辿り着く。  裏で魔物を統括している者がいる。  それが人間なのか、それとも知能が高い魔物の類なのかは判断がつかない。 「……ぬう。それで、何か打開する策は有るのか」 「報告では、敵一体の力はそれほどではないようで、正面から当たれば新兵でも五分の勝負が出来るだろうと」  絞り出すかのように問う王に対し、大臣は鼓舞の期待を込めて告げる。 「せめてもの救いか……。しかし、敵の数が減らぬ以上、持久戦か、いずれは後退戦になることは明白だ」 「国を囲う、国境でもある切り立った山々のせいで他国からの救援も期待できません」 「百年に及ぶ平穏が、このような形で破られようとは……! ようやくかの世界への扉を見つけ、更なる発展をしようという、この時に!」  王は驚愕し、然るのち激昂すると、苦労を重ねて皺(しわ)のでき始めた拳に、一杯の力を込めた。
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