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…ここは、とある部屋…。
コンポから、時代遅れのロックが聴こえてくる。
甘く切なく…
時には激しく響く歌声にすら慣れてしまったような様子で、椿稀はため息をついた。
「はぁー…
こんな毎日が、いつまで続くのかなぁ…」
椿稀は、お気に入りのゴシック・ロリータ服を身に纏い
沢山の、洋服のデザイン画が描かれたノートをめくりながらため息をついた。
そこから少し離れた所にあるキッチンでは、海ちょんがテレビを見ながら楽しそうにお菓子を作っている。
「椿稀ちゃん、そんなに辛気臭い顔をしないで。
地道に頑張ってれば、いつかあのテレビに映ってる子みたいに輝ける日が、絶対に来るよ!」
「…そうかな…
そうだといいな…」
海ちょんの隣にあるテレビには、最近有名になった清純派アイドル『めっちん』が
『はーい、みなちゃまー!!
応援してくれて、ベリベリちゃんちゅー!!!!』
と、ファン達に向かって挨拶している。
その笑顔は、様々な苦難を乗り越えた後に構築された印のように思えた。
椿稀は、ノートを閉じ…
側にあった雑誌を手に取り、ページをめくる。
「はぁ…
そうだね…頑張らなきゃ…」
椿稀は、海ちょんに聞こえるかどうか定かではないほどの声で、そう呟いた。
…夢を目指すというのは…
今まで気付かなかった現実に、次々と直面していく行為といっても過言ではない。
それに気付きつつあった椿稀は、期待と不安の中で密かに戦っていたのであった。
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