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そんな椿稀に、海ちょんはお菓子を作る手を休めながら言う。
「椿稀ちゃんの夢は…
ファッション・デザイナーなんだよね?」
「うん…
服の作り方や、パターンの起こし方もみんな覚えたわ…
でも、肝心のデザインが…
納得のいくものが、全然思い付かないの…」
「どれどれ…
ちょっと見せてね?」
海ちょんはそう言いつつ、椿稀がデザインした服のイメージが描かれているノートを、パラパラとめくり始めた。
「わぁ…
素敵…!!
どれもこれも、みんな素敵…!
私、椿稀ちゃんの好きな『耽美な世界』の服はよく分からないけれど…
これなら、私でも着たいって思うよ!!」
そう言いながら表情を輝かせる海ちょんとは反対に、椿稀は更にため息をつく。
「…最近流行りの服に、ロリータ系のデザインを合わせてみたの…
海ちょんが気に入ってくれるのは嬉しいけれど、やっぱり納得がいかない…」
「えー、どうして…?」
「私は…
流行に左右されず、本当に服を着ることが大好きな人たちに向けた服を作りたいけれど…
やっぱり、それだけじゃあ『売る』ことは難しい…
私は、私や同じ感性を持った人たちが着たい服を作りたいのに…
流行を軽々と取り入れてしまっては、私のポリシーに反してしまうわ…」
「椿稀ちゃん…」
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