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始まりは大学の帰り道。
梅雨真っ只中の6月下旬。
あの日も例に漏れず土砂降りの雨が降っていた。
傘を差していても意味がなくいっそのこと傘を放り出してしまおうかと思いたくなるような土砂降り。
視界は悪くザァーザァーという音が耳障り。
挙げ句に雨独特の匂いと肌に纏わりつく水滴と湿気。
五感のうち4つを奪われていたからなのだろう。
普段は全くと言っていい程鈍感なクセに…
この日は第六感がせっせと働いてしまった。
違和感に気付いたのは家と大学の丁度中間地点。
なんとなしに立ち止まってなんとなく見上げたカーブミラーには自分の真っ赤な傘の一部とその赤を逃がすまいと傘も差さずに電柱の隙間から覗く真っ黒の影と2つの瞳。
彼女は後日学友にこう語ったという。
何故コナ○君の犯人が真っ黒で登場するのか…その理由がわかった気がする。と…
とはいえ、その時はそんなに冷静でいられる訳もなく傘を放り投げて走り出した。
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