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『こんちわ~。瀬川急便でーす。』
間の抜けた声を上げながらも声の主はドアを叩く手は止めない。
扉の向こう側の主がわかったにも関わらず綾花は扉を開けようとはしない。
それどころか体の震えが止まらなかった。
確かに帰り道に見たあの影は怖かった。
確かにずぶ濡れの状態で今は寒かった。
それでも…それでもっ!!
今の綾花はそんなの全部が吹っ飛んでいた。
「な、なんで…?なんで宅配の人がドアを叩けるの…?」
「オートロックも鳴っていないのに…。」
綾花は恐怖で押しつぶされそうになりながらも自分を落ち着かせようとしていた。
そうだ。インターホンの音に気付かなかったのかもしれない。
それでたまたまこの家の住人と鉢合わせして開いたオートロックから入ってきたのかもしれない。
いやっ、普通はオートロックがたまたま開いてもわざわざ上がって来ないだろう。
エントランスには宅配ボックスもあるし、不在票をポストに入れればいいだけなのだから。
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