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(この人を何処かで見たことがある。どこだったっけ???)
ケンタロウの驚いた顔を見た彼女もビックリしたようだ。
『大丈夫ですか~?急いでいたようだったので、荷物拾っときました♪』
『あっありがとうございます。』
彼女の手にふと目をやると、右手にはケンタロウの鞄が握られていた。
そして、何故か左手には山下さんに借りたCDが握られている。
『私この歌手の大ファンなんです♪どこのCDショップを探してもこのCDだけ置いてないんですよね~…』
少しの沈黙があった。
普段、女性と会話をしないケンタロウはひどく動揺した。
ほんの数秒しかない沈黙が、彼には何十分にも、何時間にも思えた。
(いきなりこの人は何を言い出すんだ??)
『もしよかったら、このCD貸してください』
……………?!
『えっ!?』
さらにケンタロウは混乱した。
『やっぱり駄目ですよね??またCDショップを探してみます』
ケンタロウは只呆然と立ちすくむ事しかできなかった。
『あ~!!私遅刻してるんでした!!それじゃ~気を付けてくださいね~♪急に飛び出したら危ないですよ (笑)』
そう言うと彼女は足早に駅の方へと歩きだした。その後ろ姿を呆然と眺めながらケンタロウは我に還った。
(いっけね~。おれも遅刻してたんだった。急がないと!)
突然の出来事にケンタロウは何が起こったのか理解できないでいた。
第一章 完
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