序章

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「今の時代男も女も関係ありませんよ。紅葉お嬢様は立派に免許皆伝に値します」  脇腹を押さえつつ、師範代の内藤が紅葉の援護をした。  女にやられたというのに、その女を援護するとは内藤も寛容な男である。  が、それも道理、内藤にとって紅葉は娘のような存在であったからだ。  紅葉が幼い時より祖父と共に稽古をつけ、早逝した紅葉の父に代わり、この道場を引き継ぐ最有力者でもあった。 「学業を全うし、成人してもその志が変わらねば、という約束でしたよね」  紅葉は祖父をまっすぐに見据えた。  普段はおじいちゃんでも、道場に入れば師。紅葉は師として祖父を見つめていた。 「・・・うむ」  祖父は組んでいた腕をほどいた。 「秋山紅葉、免許皆伝とす」  祖父は短く言う。その言葉に道場は沸き返った。
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