邂逅

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 そして足早に歩きだす。  前にもこんなことがあった。  紅葉は京で、伊東と会っていて、乱入してきた土方が紅葉を問答無用で連れ去ったのだ。  力強い手。  このままどこかへ連れ去ってくれたら。  戦いのないどこかへ。  しかし土方が紅葉を連れて行ったのは、一軒の万屋の一室だった。  土方は扉を閉めると、大きく息をつく。 「ここんなところまで・・・・一人で来たのか?」 「一人です。沖田さんが逝ってしまってから、私はずっと独りです」  突然、紅葉の瞳から涙が溢れる。  止め処なく。  紅葉は懸命に涙を拭うが、涙は止まらない。 「良かった・・・・・・歳さんが生きていてくれて」  もう止められない。  肩を震わせ泣く。
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