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土方は紅葉の顎に手をやると、その顔をあげた。
涙で濡れてひどい顔。
こんな顔見られたくない。
紅葉は横を向こうとした。
が、土方の力は強く、それを赦さない。
土方はじっと紅葉の顔を見つめている。
紅葉も土方の顔を見た。
少しやつれた。
華々しく凱旋した人とは思えないほど、落ち着いた静かな目をしている。
髪が伸びた。
洋装がすっかり馴染んでいる。
京に居た頃の土方ではない。
しかしその眼の奥は、そのままに、蒼い炎が宿っている。
ああ、土方だ。
何も変わってはいない。
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