雪解け

7/20

3944人が本棚に入れています
本棚に追加
/449ページ
 そして紅葉は恐る恐る土方の顔を見上げる。  苦い顔。  やっぱり。 「いえいえ。お役に立てたのなら良かった。私ももう一度お会いしたかったのですが、何せ土方君が会わせくれなくて」  大鳥は土方の顔色など気にした風もなく、笑顔で話す。  結構大物かも、この人。  大鳥は尚も喋り続ける。 「一度三人で食事でも、と言ったのですがね、冗談じゃないと怒られてしまいましたよ」 「当たり前だ。なぜ大事な女を他の男の前に連れていかなくてはならんのだ」  土方は憮然として言った。  大事な女。  密かに喜んでいると、土方が部下に呼ばれる。  どうやら捕物らしい。 「紅葉、もう帰れ」  土方はそう言うと、駆けて行った。
/449ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3944人が本棚に入れています
本棚に追加