雪解け

13/20

3944人が本棚に入れています
本棚に追加
/449ページ
「梅の花一輪咲てもうめはうめ」  ふと、土方がつぶやく。 「なんですか、それ」 「俺が昔読んだ句だ」  土方は紅葉を見あげ苦笑した。  その出来の悪さを自覚しているのであろう。 「紅葉も一句詠んでくれ」 「ええっ」  突然振られても。  紅葉は長い沈黙の後、つぶやいた。 「・・・・・・・紅梅舞う誠の道を鮮やかに」  字余り。 「あまり進歩が見られんな」  土方は笑った。 「どうせ私には才能がありませんよ」 「いい。その方が紅葉らしい」  土方は再び目を閉じた。
/449ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3944人が本棚に入れています
本棚に追加