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「梅の花一輪咲てもうめはうめ」
ふと、土方がつぶやく。
「なんですか、それ」
「俺が昔読んだ句だ」
土方は紅葉を見あげ苦笑した。
その出来の悪さを自覚しているのであろう。
「紅葉も一句詠んでくれ」
「ええっ」
突然振られても。
紅葉は長い沈黙の後、つぶやいた。
「・・・・・・・紅梅舞う誠の道を鮮やかに」
字余り。
「あまり進歩が見られんな」
土方は笑った。
「どうせ私には才能がありませんよ」
「いい。その方が紅葉らしい」
土方は再び目を閉じた。
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